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タンザニア(モロゴロ)での調査経験と現在のキャリア

渡邉 麻友
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程(5年一貫制)在籍)

 私はナミビア北中部でプロテスタント教会の聖職におけるジェンダー研究を行っています。これまで計6ヶ月の現地調査中は、教会のゲストハウスや牧師夫婦宅に滞在し、地域の人びとの文化や宗教観に触れながら生活しました。

 なかでも牧師夫婦のもとでの生活は私の研究をより深める経験になりました。私の「家族」は、教会の財産管理責任者である父とナミビア聖書協会に勤める母、大学生の妹と高校に通う弟2人、住み込みをしている母方の姪で構成されていました。私はきょうだいの中で年齢こそ一番上でしたが、炊事・洗濯・掃除など生活に必要なさまざまなことを一から教えてもらいました。

 例えば、毎週土曜の午前はきょうだいそろって洗濯を行います。日本と異なり洗濯機を使わずすべて手洗いするため、大きいシーツや分厚い衣類の扱いには慣れが必要です。また、主食であるトウジンビエを水に浸して数日発酵させ、天日干しにしたあと脱穀するのも子どもたちの仕事です。手際よく行うきょうだいを見様見真似で手伝うも、最初の頃はうまくできませんでした。こうして日々過ごしていく中で、現地の生活に必要なスキルを習得し、「家族」の一員になることを目指しました。

 ある日の夕食時、父に「マユは自分の生まれた時間を知っている?」と尋ねられました。私は、「たぶん朝だったと思う。」と答えると、「オヴァンボ(この地域のエスニックグループ)では朝に産まれた女の子をNangula(ナングラ)と名付けるんだ。今日からマユはナングラだね!」と私にナミビアの名前をつけてくれました。その日から私はナングラと呼ばれ、調査のときにも自己紹介で名乗るようになりました。

 日常生活に必要なことを一から教えてもらい、ナミビアの名前をもらった私は、こうして地域の生活に馴染んでいくことができました。これらの経験は、直接的に論文に記したり発表したりすることはありませんが、私自身の留学体験をより豊かにし、研究を深めることにつながっていると感じています。ナミビアで「家族」と暮らした経験を活かし、今後も研究を続けていきたいです。

(2025年3月時点)